【エッセイ】灯台下暗し。
この前、会社に出勤するために電車に乗っていたら、おじさん2人がケンカをしていた。
「ふざけんな!お前降りろ!!」
「お前が降りろよ!!」
と、車内全体に響き渡るような大きな声で、どちらが降りるかを言い争っていた。
50代前半くらいのいい大人が、大声出してしょうもない事でケンカをして、とてもみっともなかった。
おじさん達の周りの人も、チラチラ横目で見ながら呆れた顔をしていた。
こんなくそみたいな、止めたところで何も得をしないケンカに、冷たい視線を浴びせていた。
その視線は、まるでレーザービームのように冷たかった。
「こんなケンカ、気にしないでさっさと寝よ」
と思い、僕は電車の中で眠りに落ちた。
数十分経って目を覚ますと、おじさん達はまだケンカしていた。
「おいおい、さすがに駅員さん呼んだ方がいいだろ」
と思っていると、隣の車両から駅員さんがやってきた。
「よかった、これでおじさんいなくなる」
と思っていると、駅員さんはおじさん達を通り越して、僕の方に向かってきた。
駅員さん「ちょっと君、次の駅で降りてくれるかな?」
僕「え!?なんでですか!?」
駅員さん「なんでって、聞くまでもないでしょう」
そうだ、思い出した。
僕はこの日寝坊をしてしまって、準備を急ぐあまり、服を着るのを忘れてしまったのだ。
申し訳ない気持ちでいっぱいになり、「すみません…」と駅員さんに謝罪をした。
そして僕は、全裸のまま、次の駅で降りた。
(全部嘘)